アナリストの忙中閑話【第150回】

アナリストの忙中閑話

(2023年11月16日)

【第150回】全米俳優組合スト終結、台湾総統選と米大統領選、38年ぶりの「アレのアレ」、クリスマス映画続々公開

金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤 豪謙

全米俳優組合は11月10日、全米映画テレビ製作者協会から提示された新契約に暫定合意、118日間続いたストライキが終結

全米俳優組合(SAG-AFTRA)は11月10日、全米映画テレビ製作者協会(AMPTP)から提示された新契約に暫定合意した。

7月14日午前0時にスタートし、118日間続いたストライキは、暫定合意を受けて、11月9日の午前0時1分で終結した。

組合の全国事務局長で首席交渉官のダンカン・クラブツリー・アイルランド氏が10日、記者会見で発表した。

全米俳優組合の理事会は10日、8日に交渉委員会が全会一致で承認した新契約を86%対14%の賛成多数で承認。今後、批准作業がスタートし、約16万人の組合員は、11月14日から12月初旬にかけて承認投票を行う。

また、フラン・ドレシャー会長は、最低給与の引き上げ、動画配信作品で成功を収めた俳優へのボーナス、人工知能(AI)の使用に関する規制など、製作者協会との取り決めの大まかな概要を説明した。

それによると、最低賃金は初年度に7%、2024年7月に4%、2025年に3.5%の一般賃金の引き上げ。背景俳優(端役)の場合、当面の引き上げ幅は11%で、契約2年目は4%、3年目は3.5%。初年度の引き上げ率は、全米脚本家組合と全米監督組合のそれを上回ったとのことだ。

また、動画配信サービスにおけるボーナスや人工知能の使用に関する規制と報酬の規定、パフォーマンス・キャプチャー、オーディションの自己録画、インティマシー・コーディネーターの義務付け、全ての出演者のヘアメイクに関する新条項等が盛り込まれたとのこと。

ドレシャー会長は、新協定には総額10億ドル以上の価値があるとしている。

前述の通り、9日にストライキは解除され、クリスマス映画等のプレミアや映画祭、授賞式等への俳優の出席が可能となった。

4カ月近く続いたストライキの影響で、新作の公開や製作の遅れは否めないが、2024年に向けては、ハリウッドもパンデミック前に向け、徐々に正常化していくものとみられる。

それにしても、今年は全米自動車労働組合(UAW)もストライキを実施。UAWは9月15日からゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、旧クライスラーを傘下に持つ欧州ステランティスの3社の一部工場でストライキを決行。

UAWと3社は4年半で25%に上る賃上げなどで10月30日までに暫定合意した。

賃上げには、トヨタやホンダ、現代自動車等も追随することが発表されている。

また、ストライキにはバイデン大統領も参加。

UAWのフェイン会長が提唱しているトヨタやテスラなど非加盟社の米国内の従業員の組合加入を促す方針に関しても、バイデン大統領は9日、ホワイトハウスで記者団に対し、「絶対的に」支持すると述べている。

2024年11月の大統領選・議会選に向けて、バイデン政権及び民主党は賃上げの動きを強く支援する構えのようだ。

来年は、1月13日に台湾総統選、3月17日にロシア大統領選、11月5日に米大統領選と、重要な選挙続く

2024年は、1月13日には台湾総統選、3月17日にはロシア大統領選、11月5日には米大統領選と、我が国と海を挟んで接する3つの国・地域で重要な選挙が行われる。

このうち、最も予測がしやすいのはロシア大統領選だ。ウラジーミル・プーチン大統領(71歳)は未だ出馬表明を行っていないが、支持率は8割程度あり、出馬すれば当選はほぼ確実だ。

ロシア大統領の任期は6年で2期まで可能。3年前の改憲で自らの任期はリセットされたため、最も長くて2期12年、83歳まで続投が可能となった。

プーチン氏は1999年12月31日にエリツィン前大統領の辞任に伴い、大統領代行に指名された。それ以降、リセットのための首相就任時を含め、23年間、ロシアのトップの座を占めてきたが、今後12年も続投となれば、終身の「ロシア皇帝」や死去するまでの31年間、その地位を維持したヨシフ・スターリン・ソ連共産党中央委員会書記長に匹敵することになる。

プーチン氏の続投は、帝政期や冷戦時代への逆行を象徴するとも言えそうだ。

一方、中国では、スターリン書記長に匹敵するのは、毛沢東中国共産党中央委員会主席だろう。やはり、死去するまでそのポストは手放なさなかった。

現在、中国で毛沢東氏に近い人物と言えば、中国共産党中央委員会総書記3期目の習近平氏だ。

過去は2期が慣例だったが、習氏は2027年11月頃に開催される第21回中国共産党全国代表大会で4期目に突入するとみられる。場合によっては、毛沢東氏同様、中央委員会主席のポストを復活させて自ら就任する可能性もありそうだ。

但し、異例な任期延長や異例なポストへの就任には、毛沢東氏でもなしえなかった偉業が必要で、その最有力が台湾統一との見方もある。

そこで、2024年1月13日投開票の台湾総統選が重要となる。

親中派の総統の誕生で、平和的な統一工作を進めるのか、独立志向の強い総統誕生で、軍事的圧力を強めることになるのか。

台湾総統選には4人が出馬、「三つ巴」や「四つ巴」となれば、民進党の頼氏有利だが、国民党と民衆党が候補者の一本化で合意、情勢一変

台湾総統選に立候補を表明しているのは4人。

蔡英文総統の与党・民主進歩党(以下、民進党)が推す頼清徳・副総統(64、民進党主席)、最大野党の中国国民党(国民党)の侯友宜・新北市長(66)、新興政党で第2野党の台湾民衆党(民衆党)の柯文哲・前台北市長(64、民衆党主席)、無所属で鴻海精密工業創業者の郭台銘氏(73)。

なお、政党推薦を受けず、無所属で出馬する郭台銘氏は総統選への立候補資格を得るため、前回総統選挙の有権者の1.5%にあたる約29万人の署名を11月2日までに提出することが必要だった。

郭氏は11月1日、自ら中央選挙委員会に署名を提出。同氏の事務所は2日、署名数が103万6,778人に上ったと発表。

台湾中央選挙委員会は14日、要件を満たす署名数は90万2,389人と発表、立候補資格は得られ、保証金の100万台湾ドルは返金されることになった。

世論調査では2023年春以降、民進党の頼氏が支持率トップを維持、足元では、国民党の侯氏が巻き返しつつあるが、元国民党員の郭氏の出馬もあり、親中派の支持が分散している状況にある。

美麗島電子報の直近世論調査(11月10日-14日調査)によると、支持率は頼氏が33.1%、侯氏が26.5%、柯氏が17.3%、郭氏が5.0%。

頼氏はかつて、台湾独立派を標榜していたこともあり(現在は蔡氏の現状維持路線を引き継ぐとしている)、中国政府の警戒感は強い。

「三つ巴」どころか、「四つ巴」の状況が頼氏を利している状況に、中国政府は業を煮やしているようだ。鴻海グループの傘下のフォックスコン(富士康科技)の関連企業に税務調査や土地使用調査を行うなど、中国が総統選挙に介入するような動きも見せている。

一方、国民党と民衆党は総統選の勝利のためには、候補者の一本化が必要とし、10月に入り協議を継続的に行っている。但し、候補者の決定方法について、国民党は「有権者による投票」、民衆党は「電話世論調査」を主張し、難航。10月30日には国民党の朱立倫主席と民主党の可文哲主席が直接会談を行ったが物別れに終わった。

但し、15日になって事態は急展開し、両党は候補者の一本化で合意した。

18日に国民党の侯氏か、民衆党の柯氏の何れかを統一候補に選び、発表する。現時点では侯氏が有利か。

総統選の候補者は11月20-24日に中央選挙委員会に届け出をする必要がある。

中国との関係が深い郭氏は、立候補後も、最終的には野党共闘のため、投票日までに立候補を取り下げる可能性があると考えられる。

民進党の頼氏、国民党の候氏、民衆党の柯氏の3つ巴、ないし郭氏が加わり4つ巴の戦いとなれば、野党の支持が分裂し、頼氏が当選する可能性が高いとみられたが、情勢は一変した。

野党陣営が一本化されれば、支持率の単純合計では野党優位になりそうだが、3人の支持者が統一候補に投票するかは定かではない。今後の世論調査の結果が注目される。

台湾総統選は、総統と副総統とペアで選出。直接投票方式となったのは1996年から。任期は4年、3選はできない。韓国大統領選同様、相対的に多数の票を獲得した候補者が当選する相対多数制だ。

2024年5月に就任する次期台湾総統の顔ぶれ及び所信表明次第では、中国の台湾に対する態度が一層硬化する可能性は否定できない。

中国としては、2027年秋の第21回共産党全国代表大会における、習近平中共中央委員会総書記の4選(中央委員会主席ポストを復活して就く可能性も)に向けて、今後、硬軟両様で、台湾統一工作を進めるものとみられる。

なお、2027年8月1日は、中国人民解放軍の創設(建軍)100年にも当たる。

但し、その手法やタイミングは、2024年の台湾総統選と米大統領選の結果が大きく左右することになりそうだ。2024年は、台湾情勢において、転機となる可能性が高そうだ。

米大統領選は2020年の再現も、今回は変数多く、予断を許さない展開

一方、11月5日には、米大統領選、議会選が実施される。

支持率等を勘案すると、民主党の候補は現職のバイデン大統領、共和党の候補はトランプ前大統領と、2020年の再現となる可能性が高い。

但し、今回は様々な変数が浮上、予断を許さない展開となりそうだ。

両者の支持率はほぼ拮抗しており、前回同様、無党派層の投票行動が帰趨を決することになりそうだ。

トランプ大統領は連邦法違反で2件、州法違反で2件の訴追案件を抱え、今後、有罪判決が出ることになれば、無党派層が一段と離反する可能性がある。

一方、バイデン大統領も支持率が40%程度で低迷、特に、インフレ長期化の影響等で、本来、民主党の支持基盤である黒人やヒスパニックの支持率が低下しており、不安要因となっている。

また、両者の一騎打ちに影響を与えそうなのが、無党派や第3政党からの立候補だ。

既に、ケネディ元大統領の甥のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が無所属での出馬を表明している。

ケネディ氏は元は民主党員だが、反ワクチン派であり、各種の陰謀論を唱えるなど、主張は共和党に近い面も多い。

また、第 3 政党グループ「ノーレーベルズ:NO LABELS」は、民主・共和両党の指名を見極めたうえで 正副候補の擁立を検討する考えを示している。

来年の議会選挙への不出馬を表明した民主党穏健派のジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州選出)の動向も注目される。

ケネディ氏の出馬はむしろ、共和党支持層から票を奪うとの見方もあるが、マンチン氏の出馬はバイデン氏に不利に働くとみられる。

尤も、2024年の大統領選・議会選では、候補者ではなく、党の政策本位で投票する有権者が増えるとの見方もある。

今年の選挙の日は、11月7日(火曜日)だった。

2023年の米国の「選挙の日」は民主党が健闘、2024年も中絶問題が焦点か

米国では、「11月の第1月曜日の翌日の火曜日」は「選挙の日:Election Day」と呼ばれ、公職の選挙が実施される日となっている。

今年は大統領選も中間選挙もない「オフ・イヤー選挙:Off-year election」だったが、投票率は昨年の中間選挙並みに高い選挙が多く、民主党が予想外に健闘することになった。

いわゆる「スイングステート(接戦州)」のバージニア州では、民主党が州議会の上下両院で多数派となり、「赤い州」と呼ばれる共和党地盤州のケンタッキー州では民主党の知事が再選された。

また、オハイオ州では中絶の権利を保証する規定が州憲法に明記された。

2022年の中間選挙でも中絶問題が焦点となり、劣勢が伝えられた民主党の善戦に繋がったが、2024年も再現される可能性がある。

特に中絶問題が自身の問題に直結する「Z世代」は他の世代よりも、政治的関心が強く、投票率も高くなる傾向がある。

「Z世代」の動向に注目したい。

尤も、今月20日に81歳となるバイデン大統領の再選がかなったとしても、低支持率でレームダック化は避けられないだろう。

米国内の「溝」は益々深くなりつつある。政治的混乱は長期化しそうだ。

米国では10月1日に2024会計年度がスタートしたが、連邦政府の本予算にあたる12本の歳出法は1本も成立せず

米国では10月1日に2024会計年度がスタートしたが、連邦政府の本予算にあたる12本の歳出法は1本も成立していない。

歳出法の成立の遅れは近年の恒例行事だが、本年1月3日に招集された第118議会は、上院は民主党が多数派、下院は共和党が多数派のいわゆる「ネジレ議会」となったことで、暫定予算に相当する歳出継続法案、いわゆる「CR」の審議も不透明で政府機関閉鎖のリスクが高まっていた。

実際、9月末には歳出継続法の成立が遅れ、政府機関閉鎖は必至とみられた。最終的に、共和党のケビン・マッカーシー下院議長が提出した歳出継続法案が下院に続き上院でも超党派の賛成で可決され、バイデン大統領の署名で9月30日深夜に成立したことで、政府機関閉鎖はギリギリ避けられた。

「2024年歳出継続法」は、11月17日まで連邦政府の歳出を継続するものだが、共和党の保守強硬派が求めていた大幅な歳出削減やバイデン政権が求めていたウクライナ支援策等は含まれていない。

混乱は続いた。反発した共和党保守強硬派がマッカーシー議長に対する解任動議を提出、10月3日、史上初めて、下院議長が解任されることになった。

その後、下院共和党は4人の議長候補を選出したが、2人は辞退、1人は下院本会議過半数を得られず、最終的に10月25日、共和党保守強硬派のマイク・ジョンソン議員(51歳、ルイジアナ州選出)が選出された。下院はほぼ1か月機能停止に。

11月17日が期限、年明けまでの歳出継続法案はまもなく成立か

ジョンソン氏は従来、ウクライナへの追加支援に反対、また、歳出の大幅削減を主張しており、前述の「2024年歳出継続法」にも反対票を投じた経緯がある。但し、議長就任後、やや姿勢を軟化させ、歳出法案の審議時間を確保するため、年明けまでの「クリーン」な歳出継続法案を提案した。

11日に発表した歳出継続法案は期限が2段階に分かれており、退役軍人・軍事建設、農業、運輸、住宅、エネルギー、水資源開発関連の省庁の歳出は2024年1月19日まで、国防総省、司法省、商務省、労働省、保健省やその他の関連の省庁の歳出は2月2日まで維持する内容となっている。

なお、大幅な歳出削減やウクライナ及びイスラエルへの支援等バイデン政権が求める1,060億ドルの追加予算も盛り込まれていない。

前週11日の段階では、バイデン政権や民主党、上院共和党執行部等からは、否定的な発言が続いていたが、週明けの13日になって、上院共和党に加え、上院民主党、下院民主党からも、容認する発言が出始めた。

背景には、17日の歳出継続法の期限まで、時間的猶予がないこと、当初、1月19日迄との報道もあった国防総省関連予算が2月2日までとなり、国防の歳出法のみが先に成立し、その他の省庁の歳出法案が積み残しとなるリスクが減退したことなどが挙げられる。

一方、下院共和党の保守強硬派からは、大幅な歳出削減が含まれていないことで、法案に反対する声が高まった。

下院の党派別勢力は共和党221対民主党の212、欠員2と、共和党の優位は9人に過ぎない。

共和党保守強硬派が反対に回れば、民主党の協力なくしては、可決できない。

「2024年歳出再継続法案」は14日、下院本会議で採決が行われ、賛成336、反対95、棄権3の超党派の賛成で可決された。

党派別内訳は、共和党は賛成127、反対93、棄権1。民主党は賛成209、反対2、棄権2だった。

民主党は慣例通り、共和党が推進する法案の審議入りのための規則投票には反対したことで、本会議での可決には、単純過半数ではなく、3分の2の賛成が必要となった。

ちなみに、9月30日に成立した11月17日まで連邦政府の歳出を継続する歳出継続法の投票結果は、下院は賛成335、反対91、棄権7で、反対票のうち90票は共和党から投じられたが、同法案も下院本会議での可決要件も3分の2だった。

「2024年歳出再継続法案」は15日には、上院本会議でも採決が行われ、賛成87、反対11、棄権2と、下院同様に超党派の賛成で可決された。まもなく大統領に送付される。

下院に続き、上院でも超党派の賛成で可決されたことで、政府機関閉鎖(ガバメントシャットダウン)を避けるため、バイデン大統領は同法案に署名する可能性が高そうだ。

尤もこの構図(シナリオ)は、9月末とほぼ同じ展開だ。歳出継続法成立後、マッカーシー議長(当時)は共和党保守強硬派から解任動議を提出され、米政治史上、初めて解任されることになった。

さすがに、新任のジョンソン議長は現時点ではハネムーン期間中であり、保守強硬派にも知己が多いことから、すぐに議長解任動議が提出される可能性は低い。

但し、来年2月2日までの歳出継続法の期限内に、共和党が推進する歳出の大幅削減等が盛り込まれた歳出法案を下院で可決できないと、マッカーシー氏の二の舞となる可能性は否定できない。

歳出削減とウクライナ支援問題が2024年1月から2月に向けた米政府機関閉鎖リスクを高めることに

大幅な歳出削減を含む共和党の党派色の強い歳出法案では、上院は通過出来ない。

一方、上院が12本の個別歳出法案を可決しても、ジョンソン氏は下院で採決に付さない可能性がある。

特に、ウクライナ支援では混乱が予想される。ホワイトハウスの説明では、ウクライナ支援資金は12月上旬に尽きるとしている。

バイデン大統領が議会に求めた1,060億ドル規模の追加予算には、ウクライナやイスラエルへの支援、国境警備、人道支援、台湾支援等広範囲な対策資金が含まれるが、6割をウクライナ支援が占める。

歳出削減とウクライナ支援問題が、2024年1月から2月に向けた米政府機関閉鎖リスクを高めることになりそうだ。

映画観客動員ランキングで『ゴジラ-1.0』が2週連続で1位を獲得

前週末(11月10日-12日)の映画の観客動員ランキングでは、前月号で特集した『ゴジラ-1.0』(ゴジラ・マイナスワン)が2週連続で1位を獲得(興行通信社調べ、以下同じ)。累計成績は動員135万人、興収21億円を突破。公開日の11月3日に鑑賞したが、良い意味で予想外の作品。読後感ならぬ鑑賞後感もタイトルとは大きく異なった。

第2位も前月号で特集した『マーベルズ』が初登場でランクイン。主要登場人物は味方も敵方も全て女性と当に女性活躍映画。今後も新キャラクター登場で「アベンジャーズは永遠に不滅」か。

第3位も前月号で特集した『法廷遊戯』が初登場ランクイン。ストーリーが異色。主役を演じた永瀬廉さんや共演の北村匠海さんも、筆者にとっては歌手より演技派の俳優の印象が強い。

第4位は『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』。前週の2位からランクダウン。

第5位には、朝井リョウ氏の同名ベストセラー小説を、岸善幸監督が稲垣吾郎さんと新垣結衣さんの共演で映画化した『正欲』が初登場ランクイン。11月1日にクロージングセレモニーが行われた「第36回東京国際映画祭」では最優秀監督賞と観客賞をダブル受賞。多様性をテーマとしたやや変わった作品だが、新垣さんや稲垣さんらの演技力もあり、ぐいぐい引き込まれた。

12月に向け、クリスマス映画や年末年始映画の公開も予定

12月に向け、クリスマス映画や年末年始映画の公開も予定されている。

11月17日公開の『 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は、水木しげる氏生誕100周年記念作品で、目玉おやじの過去と鬼太郎誕生にまつわる物語を描いた長編アニメーション。

廃墟となっているかつての哭倉村に足を踏み入れた鬼太郎と目玉おやじ。目玉おやじは、70年前にこの村で起こった出来事を想い出していた。あの男との出会い、そして二人が立ち向かった運命について。

11月17日公開の『スラムドッグス』は、捨てられた犬たちが飼い主に復讐を企てる姿を描くコメディ映画。

ある日、犬のレジーは、飼い主ダグに家から遠い場所に捨てられてしまう。しかしピュアなレジーは、投げられたボールを取りに行く、いつもの「取ってこいクソッタレ」ゲームだと信じていた。家を目指してさまよっていると、ノラ犬界のカリスマ・バグと出会う。レジーの話を聞いたバグは「捨てられたんだよ。お前は今日から『ノラ犬』だ」と断言する。飼い主ダグが最低なヤツだと気付いたレジーは、まさかの方法で復讐することを決意。「あいつの大切なチ○コを噛みちぎってやる」大胆なレジーの計画に賛同したバグの友達であるマギーとハンターも仲間に加わる。

11月23日公開の『首』は、北野武氏が監督・脚本を手がけ、「本能寺の変」を題材にした戦国スペクタクル作品。

天下統一を掲げる織田信長は、毛利軍、武田軍、上杉軍、京都の寺社勢力と激しい戦いを繰り広げていたが、その最中、信長の家臣・荒木村重が反乱を起こし姿を消す。信長は羽柴秀吉、明智光秀ら家臣を一堂に集め、自身の跡目相続を餌に村重の捜索を命じる。秀吉の弟・秀長、軍司・黒田官兵衛の策で捕らえられた村重は光秀に引き渡されるが、光秀はなぜか村重を殺さず匿う。村重の行方が分からず苛立つ信長は、思いもよらない方向へ疑いの目を向け始める。だが、それはすべて仕組まれた罠だった。

北野監督がビートたけし名義で羽柴秀吉役を自ら務め、明智光秀を西島秀俊さん、織田信長を加瀬亮さん、黒田官兵衛を浅野忠信さん、羽柴秀長を大森南朋さん、秀吉に憧れる農民・難波茂助を中村獅童さんが演じる。

11月23日公開の『ロスト・フライト』は、『300 (スリーハンドレッド)』などのジェラルド・バトラーさん主演で、ゲリラ組織が支配する島に不時着した飛行機の機長が、犯罪者と手を組みながら窮地を乗り越えていくサバイバルアクション。

東京を経由しシンガポールからホノルルへ、新年早々悪天候が予想される中、会社の指示で難しいフライトに臨むトランス機長は、ホノルルの地で離れて暮らす愛娘との久々の再開を待ち焦がれていた。しかし、離陸直前に移送中の身の犯罪者・ガスパールの搭乗が告げられ、悪天候だけでなく予定外のフライトに暗雲が立ち込めていた。フィリピン沖上空で、突如激しい嵐と落雷に巻き込まれ機体の電気系統が機能を停止。通信も途絶えコントロールを失ったトレイルブレイザー119便に、トランスは意を決し着水の準備に入るも、寸前で目の前に広がった孤島へ奇跡的に不時着した。一命をとりとめたトランス機長を含む乗客17名だったが、そこは凶暴な反政府ゲリラが支配する世界最悪の無法地帯・ホロ島だった。刻々と危険が迫る囚われた乗客たちの身を危ぶみ、トランスは救助を待たず、元傭兵の過去を持つ犯罪者であるガスパールと手を組むことを決意。難攻不落のゲリラ拠点へたった二人で乗客の救出に向かう。

11月23日公開の『翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて』は、魔夜峰央氏のギャグ漫画を実写映画化して話題を呼び、興行収入37.6億円の大ヒットを記録した『翔んで埼玉』のシリーズ第2弾。主人公・麻実麗役のGACKTさん、壇ノ浦百美役の二階堂ふみさんが引き続き主演を務めた。

東京都民からひどい迫害を受けていた埼玉県人は、麻実麗率いる埼玉解放戦線の活躍により、通行手形を撤廃し自由と平和を手に入れた。日本埼玉化計画を推し進める麗は、埼玉県人の心を一つにするため、越谷に海を作ることを計画する。白浜の美しい砂を求め、未開の地・和歌山へと向かうのだが。関西にも存在する「超・地域格差」に「通行手形制度」。そして、恐るべき大阪の陰謀はやがて日本全土を巻き込む東西対決へと展開していくのだった。

12月1日公開の『怪物の木こり』は、2019年・第17回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した倉井眉介氏による小説を、亀梨和也さん主演、三池崇史監督のメガホンで映画化したサイコスリラー。

絵本「怪物の木こり」の怪物の仮面を被り、人間の脳を奪い去る連続猟奇殺人。その捜査線上に犯人が唯一殺し損ねた男、弁護士・二宮彰の名が浮上する。実は二宮は目的のためには殺人すらいとわない冷血非情なサイコパスだった。総力を挙げて捜査を進める警察と、犯人への逆襲を狙う二宮。先に真相に辿り着くのはどっちだ。サイコパスVSシリアルキラー。驚愕の結末まで、この狂気は止まらない。

12月1日公開の『エクソシスト 信じる者』は、当時大きな話題となった1973年製作の『エクソシスト』の続編で、同作より50年後の現在を舞台に、悪魔に憑依された2人の少女が呼び覚ます恐怖を描いたホラー映画。印象的な音楽も受け継いでいる。

ヴィクターは12年前に妻を亡くして以来、1人で娘のアンジェラを育てている。ある日、アンジェラと親友のキャサリンが森へ出かけたきり行方不明となるが、3日後に無事保護される。しかし、その日から彼女たちの様子がどこかおかしい。突然暴れ出し、叫び、自傷行為を行うなど常軌を逸した行動を繰り返す2人。ヴィクターはかつて憑依を目撃した経験者クリス・マクニールに助けを求め、悪魔祓いの儀式を始めるが、それは想像を絶する危険な試みだった。懸命に見守る親達を嘲笑い悪魔は問いかける。1人は生き残り、1人は死ぬ。どちらかを選べと。

同じく12月1日公開の『ナポレオン』は、巨匠リドリー・スコット監督が『ジョーカー』のホアキン・フェニックスさん主演で、フランスの英雄ナポレオン・ボナパルトを描いたスペクタクル超大作。

1789年に自由・平等を求めた市民によって始まったフランス革命。マリー・アントワネットは斬首刑に処され、国内の混乱が続く中、天才的な軍事戦略で諸外国から国を守り皇帝にまで上り詰めた英雄ナポレオン。最愛の妻ジョゼフィーヌとの奇妙な愛憎関係の中で、フランスの最高権力を手に何十万人の命を奪う幾多の戦争を次々と仕掛けていく。冷酷非道かつ怪物的カリスマ性をもって、ヨーロッパ大陸を勢力下に収めていくが。フランスを「守る」ための戦いが、いつしか侵略、そして「征服」へと向かっていく。彼を駆り立てたものは、一体何だったのか。

12月8日公開の『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は、ジョニー・デップさん主演、ティム・バートン監督の『チャーリーとチョコレート工場』に登場した工場長ウィリー・ウォンカの始まりの物語を描くファンタジーアドベンチャー作品。

幼い頃から、いつか母と一緒に美味しいチョコレートの店をつくろうと夢見ていたウォンカは、夢を叶えるため、一流のチョコレート職人が集まるチョコレートの町へと向かう。しかし、そこはチョコレート組合に警察すらも支配されてしまった、夢見ることを禁じられた町だった。世界一おいしくて、一口食べると幸せな気分になり、空だって飛べる、誰も味わったこともないウォンカの「魔法のチョコレート」はまたたく間にみんなを虜にし、ウォンカは一躍人気者となるが、彼の才能を妬んだ「チョコレート組合3人組」に目をつけられてしまう。さらに、とある因縁からウォンカを付け狙うウンパルンパというオレンジ色の小さな人も現れたから、さあ大変。果たしてウォンカは無事にこの町にチョコレート工場をつくることができるのか。

「窓ぎわのトットちゃん」

「窓ぎわのトットちゃん」
全国劇場にてロードショー
©黒柳徹子/2023映画「窓ぎわのトットちゃん」製作委員会

同じく12月8日公開の『窓ぎわのトットちゃん』は、黒柳徹子さんが自身の子ども時代をつづった世界的ベストセラー「窓ぎわのトットちゃん」をアニメーション映画化。

落ち着きがないことを理由に、小学校を退学になってしまったトットちゃん。新しく通うことになったトモエ学園の校長先生は、出会ったばかりのトットちゃんに優しく語りかけた。

「君は、ほんとうは、いい子なんだよ」。トットちゃんの元気いっぱい、すべてが初めてだらけの日々が始まる。

12月15日公開の『ウィッシュ』は、『アナと雪の女王』のスタッフ陣が贈る、2023年にウォルト・ディズニー・カンパニーが創立100周年を迎え、その記念作となるドラマティック・ミュージカル・アニメーション。本作は長きにわたりディズニー作品が描き続けてきた「願いの力」を真正面からテーマとして描く、100年の歴史の集大成とも言うべき作品。これまでディズニー作品の主人公たちは強く願う力で道を切り開いてきたが、本作はそんなどの作品の世界より前から存在するファンタジーの世界、どんな「願い」も叶うと言われている 「ロサス王国」を舞台にした物語。 願いが叶う魔法の王国に暮らす少女アーシャの願いは、100歳になる祖父の願いが叶うこと。だが、すべての「願い」は魔法を操る王様に支配されているという衝撃の真実を彼女は知ってしまう。みんなの願いを取り戻したいという、ひたむきな思いに応えたのは、「願い星」のスター。空から舞い降りたスターと、相棒である子ヤギのバレンティノと共に、アーシャは立ち上がる。「願いが、私を強くする」。願い星に選ばれた少女アーシャが、王国に巻き起こす奇跡とは。

屋根裏のラジャー

屋根裏のラジャー
全国ロードショー
©2023 Ponoc

同じく12月15日公開の『屋根裏のラジャー』は、『メアリと魔女の花』のスタジオポノックが、イギリスの詩人・作家のA.F.ハロルド氏の小説「The Imaginary(ぼくが消えないうちに)」を映画化した長編アニメーション。

彼の名はラジャー。世界の誰にも、その姿は見えない。なぜなら、ラジャーは愛をなくした少女の想像の友だち「イマジナリ―」。しかし、イマジナリには運命があった。

人間に忘れられると、消えていく。失意のラジャーがたどり着いたのは、かつて人間に忘れさられた想像たちが身を寄せ合って暮らす「イマジナリの町」だった。

東京都心で猛暑の記録を大幅更新、「猛暑日」22日、「真夏日」90日、「夏日」も143日と過去最多更新

今夏は暑く、残暑も過去にないほど長く厳しかった。

実際、東京都心(千代田区)でも様々の記録を更新、最高気温が35度以上となる「猛暑日」は8月29日で、今年に入ってから22日目となり、2022年の16日を抜き、年間の過去最多を更新した。

一方、最高気温が30度以上となる「真夏日」の「連続記録」は台風13号の接近で気温が低下したことで、9月7日で途切れたが、それでも、7月6日から9月7日まで64日間と、記録を大幅更新した。これまでの最長は、2004年7月6日から8月14日の40日連続だった。

東京都心の「年間真夏日日数」はこれまで、2010年の71日間が最多だったが、今年は9月28日で90日目となり、最多記録を更新した。

なお、最高気温が25度以上となる「夏日」は、東京都心ではこれまで、2022年の140日が最多だったが、今年は11月7日に27.5度を記録、143日と過去最多を更新。

また、7日の記録は11月としての最高気温を100年ぶりに更新した。これまでは1923年11月1日の27.3度が最高だった。

11月6日(25.1度)に続き、連続して夏日となったのも観測史上初めて。11月4日(26.3度)と併せ、11月として夏日が3日目となったのも観測史上初と、観測史上初づくしとなった。

「真夏」は3か月、「夏」は5か月近くとなり、その分、秋や春が短く、この傾向は地球温暖化の進行で一段と強まることに

今年の東京の例では、「真夏」は3か月間、「夏」は5か月間近くとなり、その分、秋や春が短くなっている。

この傾向は地球温暖化の進行で今後、一段と強まりそうだ。

世界気象機関(WMO)は11月8日、今年の10月は、観測史上最も暑い10月となったと発表。また、2023年は観測史上最も暖かい年となるのがほぼ確実としている。

背景には、本年春に発生したエルニーニョ現象がある。

なお、同現象による地球の気温への影響は通常、発生年の翌年、今回は2024年に強まることから、WMOは2024年の世界の平均気温は2023年よりもさらに暖かくなる可能性を指摘している。

38年ぶりの「アレのアレ」と、日銀の金融政策

今年、気象の分野では様々な記録が打ち立てられたが、野球界では、1985年以来、38年ぶりに「アレのアレ」が達成された。

阪神タイガースがセントラルリーグ優勝に続き、日本シリーズを制覇したのだ。「アレ」とは岡田監督が、選手が意識し過ぎないように「優勝」という単語を封印した隠語。最初の「アレ」はセリーグ優勝、次の「アレ」は日本シリーズ優勝を意味するようだ。

阪神タイガースの前身、株式会社大阪野球倶楽部(大阪タイガース)創立は1935年と、球団には88年の歴史があるが、実は「アレのアレ」は2回目。ファンにとっては当に「悲願の快挙」だ。

日本シリーズ(10月28日から11月5日)と重なったハロウィンが関西で盛り上がらなかったのも無理はない。

筆者は必ずしも野球ファンではないが、大リーグでのイチロー選手と大谷選手の活躍に加え、1985年の阪神の優勝(日本シリーズも優勝)だけは盛り上がった記憶がある。

当時、筆者は三井銀行の梅田支店で融資業務に就いていたが、阪神のセリーグ優勝が1964年以来21年ぶりに決まった10月16日(対ヤクルト戦、神宮球場)は、梅田支店の隣にあった阪神百貨店前に設置されたスクリーンに集まった観衆の声が窓越しに響き渡ったのを覚えている。

当時は9時や10時までのサービス残業は当たり前。その後、退行すると、梅田はファンで溢れかえり、そこら中で応援歌が合唱されていた。警察官の姿はほとんど見当たらなかったが、高揚感からか不思議に危険な雰囲気は感じなかった。

当時はバブル前、実は、阪神優勝ムードの裏側で、秘密裡に先進5か国(G5)財務大臣・中央銀行総裁会議が9月22日にニューヨークのプラザホテルで開催され、円の切り上げが決まっていた。いわゆる「プラザ合意」だ。

その余波を大きく受けたのが、阪神優勝直後の1985年10月19日に東京証券取引所に上場した長期国債先物だ。

上場日に102円ちょうどで寄り付いた長期国債先物は円高誘導のために実施された日本銀行の「短期金利高め放置(誘導)」により、11月14日には89円82銭まで暴落した。

思えば、これがバブルの始まりだった。プラザ合意前、1ドル250円程度だったドル相場はそれから1年後には1ドル150円台に、2年後には1ドル120台と円の価値は2倍に急騰。

日銀は円高不況に対応し、1986年の年明けから利下げに踏み切り、公定歩合を1985年当時の5%から1987年2月には2.5%にまで引き下げた。

筆者は1986年の年明けには証券部門に転勤となり、債券ディーラーとして、1987年5月に向けた「債券バブル」に臨むことになった。

バブルはその後、1989年12月ピークの「株式バブル」、1991年秋頃ピークの「不動産バブル」に移行し、そして、バブルが崩壊、その後、30年にわたる日本経済の停滞が続くことになる。

東日本大震災の影響もあり、今から12年前の卯年の2011年10月末には1ドル75円30銭台の史上最高値をつけたが、足元では半値の1ドル150円台に下落。

消費者物価を調整した実質実効為替相場では1ドル360円時代の1969年以前の円安水準となっている。

そうした円安、輸入インフレを受けてか、植田新総裁率いる日銀は7月に続き、10月末の金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を一段と柔軟化、長期金利の上限を1.0%目途とし、毎営業日実施していた1.0%水準での国債の指し値オペを廃止し、1%を若干超える水準への長期金利の上昇を容認することになった。

今後は、マイナス金利政策の解除等、緩やかな金融政策の正常化を2024年に向けて進める構えとみられる。

阪神タイガースの38年ぶりの「アレのアレ」が、前向きな意味で、日本社会や日本経済の転換点の兆しであることを期待したい。

末澤 豪謙 プロフィール

末澤 豪謙

1984年大阪大学法学部卒、三井銀行入行、1986年より債券ディーラー、債券セールス等経験後、1998年さくら証券シニアストラテジスト。同投資戦略室長、大和証券SMBC金融市場調査部長、SMBC日興証券金融市場調査部長等を経て、2012年よりチーフ債券ストラテジスト。2013年より金融財政アナリスト。2010年には行政刷新会議事業仕分け第3弾「特別会計」民間評価者(事業仕分け人)を務めた。財政制度等審議会委員、国の債務管理の在り方懇談会委員、地方債調査研究委員会委員。趣味は、映画鑑賞、水泳、スキューバダイビング、アニソンカラオケ等。

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